委員長あいさつ
全駐労沖縄地区本部は、米軍の施政権下にあった1961年6月18日に全沖縄軍労働組合連合会として結成され60有余年が経過しました。米軍統治下で弾圧と差別、無権利状態を強いられてきた基地労働者の団結と組織的な闘いはここから始まりました。
初代委員長の上原康助氏(元衆議院議員)は回顧録で全軍労の闘いは、まさに人間回復の闘いだったと述べています。
上原氏は当時をふり返り、同じ仕事をしても沖縄人は米人の10分の1、比島人の6分の1、本土人の4分の1ないし3分の1の賃金だったと証言しておられます。
勿論、ボーナスも年休もありません。それどころか米人監督者の感情一つでいつでも首を切られ、労働基本権も米軍布令(米軍が発する法規範類)によって剥奪され基本的人権はないがしろにされる差別と抑圧の時代でした。
先輩方はそうした米軍の弾圧の中で組合を結成し、英知を結集して様々な困難を乗り越え基地労働者の権利や賃金労働条件を一つ一つ積み上げてきたのです。
日本政府による労務費負担を規定した新特別協定は基地労働者の雇用安定に欠かせない政策でありますが、そもそも日本政府による労務費負担は1960年代~1970年代の大量解雇を背景とした全軍労・全駐労の闘いを経て駐留軍労働者の雇用の安定に資するとして始まったのであります。
今でこそ、賃金労働条件は国家公務員に準ずるとされ、日本政府の労務費負担等もあって雇用も安定的に推移していますが、今ある権利や賃金労働条件、日本政府の労務費負担は、何一つ与えられたものではなく基地労働者の闘いで成し遂げられたものです。
基地労働者は今日においても、世界の動きや米国の戦略変更、日米の政治・経済状況の変動等によって影響を受ける不安定な雇用環境にあることに変わりはありません。
また、二つの主権国家の狭間で、国内法令の適用もままならず労働者に係わる国内法の変更があっても米側の同意を必要としているため適用されない実態に置かれています。
そして、在日米軍再編に伴う雇用の確保や国防という公務に従事する基地労働者のステータスの確立(法的身分の確立)は喫緊の重要課題であります。
一方、市場原理主義の破綻による世界的な経済不況と自公政権下で悪化を続ける財政状況、拡大する格差社会、深刻なこどもの貧困問題、労働環境を悪化させる労働法制の改悪、国民の権利を規定する憲法改正の動きなど労働者は困難な時代に直面しています。
また、東日本大震災の復興が急がれる中、熊本の震災など自然災害が頻発し、憂慮される状況に直面しています。
しかし、こういうときだからこそ日本人の思いやりや粘り強さを発揮して、つながり・ささえあって希望を持ち続けることで未来の展望を切り開けると思います。
団結して支え合い、知恵を結集して闘うこと、これは労働組合の本質だと思います。
全駐労は労働組合の社会的使命を再確認し、全国の基地労働者を代表して労働者の連帯で社会的課題や抱える課題の克服に挑んで参ります。
温故知新といわれますが、60年有余年の闘いを教訓としながら未来へむけて歩みを進めて参りますので組合員各位や関係する皆さまのご理解とご指導をお願い申し上げます。